ユニクロ帝国(「週刊文春」、2009年12.31/1.7)

 週刊文春が不況下で「ひとり勝ち」と称賛されるユニクロ商法と柳井社長を取り上げている。論調は批判的だが、矛先はいまひとつかなという印象だ。

 私なりの疑問と問題点を挙げてみる。
 1)柳井氏夫妻の二人の息子、合わせて4名の持株比率が約45%。
 これで、上場企業と呼べるのか疑問に思った。「上場」とは、社会に自分の会社を「売る」ことである。別の言い方をすれば、社会の持ち物になることである。だから、企業は社会性をおびるのである。
 ところが、家族で45%も保有している。これでは、個人経営の「柳井商店」とは何ら変わらない。どうして、上場したのかも不明。会社が創業家のものだと思うのなら、上場しなければいい。当然、上場企業でありながら、社会性を欠如することになる。

 2)生産はすべて人件費の安いアジアの工場に外注しており、自社工場をひとつも保有していない。グループ全体で3万人を超す従業員のち正社員は1割強。
 要するに、3000人強の社員が2万7000人の非正規雇用を使用しているということか。ファブレス(工場を持たない)メーカーが、ユニクロということなのだろうが、それほど高度の技術がなくてもアパレルメーカーは成り立つという証でもある。安い原材料、安い工場労働者の賃金の果てが高収益なわけだから、儲けすぎである。
 しかしよく考えて欲しい。人件費が安いというのは、その国がまだ貧しく、十分な働き場所がないので、低賃金でも住民がガマンしてぎるということであって、満足しているわけではない。いずれ、豊かな暮らしを求めて、国の成長とともに賃金値上げを要求するようになるだろう(中国が好例)。そのとき、ユニクロは当然、労賃の安い国を求めて、例えば、ベトナムなどに生産を委託するようになるだろう。
 どんな国でも、貧しくてもいずれ自国のメーカーが生産するものを希望し、国もそう政策する。かつての日本と米国である。しかし日本の製造メーカーが米国を抜いたように、その逆も起きる。
 ユニクロは、根無し草である。
 単に金儲けのため移動しつづける企業に過ぎない。個人的な希望でいえば、社会的な雇用に関心を持たない、努力しない企業にはさっさと日本から出て行って欲しいと思っている。ユニクロがなくなっても、それで日本国民が餓死するわけではない。

 3)柳井氏「アパレルは労働集約産業なので、100%正社員では経営が成り立たない」
 それは、柳井氏やユニクロの理屈であって、日本や日本国民にとって何の関係もない。日本政府は、国民の安定した生活と平和な暮らしを保障する義務がある。ありていにいえば、よりよい社会の建設である。雇用の確保は、国家の国民に対する責務のひとつである。ユニクロの経営が成り立つかどうかは、ユニクロの問題だって、そのために国民の生活を不安定にする、もっというなら劣悪な労働環境に曝しても良いということにはならない。非正規雇用が大半を占めるような雇用実態が許されるわけではない。
 経営が成り立たないのなら、そのビジネスに社会性がないということなのだから、事業を中止すべきだと思う。ユニクロのために国があり、国民が暮らしているわけではないのだから。

 そんなことよりも、ユニクロの店で働くバイトに1カ月1万円程度の自社製品を買わせることを止めたらどうか。いくらユニクロの商品が安いと言っても、バイト(非正規雇用)からバイト代を取り戻そうするような行為は情けない。