新刊書「戦争体験と経営者」(岩波新書)

7月20日発売の『戦争体験と経営者』(岩波新書)の目次を紹介したいと思います。

はじめに
執筆に至った経緯と私の思いを書いています。

第1章 戦地に赴くということ
    中内 功(ダイエー創業者)
    堤 清二(セゾングループ元代表

第2章 日本軍は兵士の命を軽く扱う
    加藤 馨(ケーズデンキ創業者)

第3章 戦友の死が与えた「生かされている」人生
    塚本幸一(ワコール創業者)
    中村伊一(ワコール元副社長、塚本の同級生)
    川口郁雄(ワコール元副社長、塚本の同級生)

第4章 終わらない戦争
    山下俊彦(松下電器元社長)
    その他、商社などの経営幹部

おわりにかえて
私が人を評価するさい、何を尺度にしているかを「追記」として説明しています。その箇所を添付します。

追記

 編集部から、第3章で取り上げたワコール創業者の塚本幸一氏が日本会議の初代会長を務めていたことを指摘された。要するに、本書の趣旨に相応しい人物なのか疑義を呈されたわけである。

 私は人を評価するさい、イデオロギーや思想信条、あるいはどのような組織に所属していたかなどをほとんど考慮しない。私にとって、重要なのは「何を行い、何を行わなかったか」という行動だけである。

 塚本氏が日本会議の会長を努めたのは、1997年からの1年間である。私が取材を始めたのは1990年頃から1995年頃までなので、塚本氏との取材で日本会議が話題にのぼることはなかった。しかも現在のように、日本会議が「政治的な」側面を強く持つ組織であることはまだ周知の事実でなかった。

 もともと塚本氏が神がかり的な一面を持っていること、宗教に深い関心を持っていることは本人も認めるところだし、周囲の人たちにも隠すようなことはなかった。私にも、科学では解明できない「何か」を探求するため、自分と同じような神がかり的な面を持つ数人と集まって定期的な会合を持っていると話している。そのとき私は、「生かされている」人生の意味を塚本氏は問い続けているのだなと思った。

 その後、神道や仏教系の人たちの集まりである「日本を守る会」が日本会議に統合され、初代議長に就任したことを知ったとき、あくまでも宗教的な色彩の延長線上の判断ではないかと推測した。すでに故人なので、日本会議の会長に就任した経緯等を改めて訊くことは叶わない。

 いずれにしても、塚本氏が日本会議の会長であることで、私の彼に対する評価が変わることはない。塚本氏の戦争体験も女性を美しくしたいと願って始めたファンデーション事業も、そしてワコールで築いた「信頼の経営」も事実だからだ。